Vol.4_野本敬大
「小さな違和感を一滴垂らすだけで当たり前から自由になれる」
2022.9.6 up
(minamo)
写真家としてだけでなく自身で企画、ディレクションも行う野本敬大。
偶然なのか、必然なのか、そんな瞬きのような写真に込められた想いとは?
独自の思考を語ってもらいました。
—今はどのようなお仕事をメインに活動してる?
広告、ファッション、アーティスト写真などが中心かな。
—写真を始めたきっかけは?
高校3年生の時、友達が撮った早朝の誰もいない教室の写真を見たことがきっかけ。
自分には教室なんて綺麗なものに見えたことがなかったから、世界が綺麗に見えている友人が羨ましかったのを覚えてる。
何に対して自分が感動しているのかも言語化できなかったから、分からないなら撮ってみようと思ってカメラを買ったのが始まり。
—初めて買ったカメラの種類は?
初めて買ったカメラはCanonのデジタル一眼だったな。
ネットで初心者用のものを調べて買った。
敬大くんの写真はフィルムのイメージが強かったんだけど最初はデジタルからスタートしてるんだね。
いつから今の作風になっていったの?
「フィルム」というものを意識したのはデジカメを買ってから1年くらい経った頃かな。
旅行で使っていた『写ルンです』のネガが返ってきたときに、自分が記録した瞬間が物質としてそこに存在していることにひどく感動したのがきっかけだったと思う。
それからはどんな写真もフィルムで撮るようになっていったなぁ。
—なるほど、、
写真を初めたきっかけとなんだか少し共通する部分を感じるね。
フィルムってやっぱりデジタルにはない魅力があると思うんだけど、
敬大くんがフィルムにこだわる理由はなに?
デジタルネイティブと呼ばれる世代なこともあって
写真というものがボタン操作で消える電子情報ではなく、質量を持って手で触れられるものであることに価値を感じる。
あとは、サブスクのある時代にレコードを聴くように、
不便さの中にある種の色気のようなものを感じているんだと思う。
—その色気はすごくわかるなぁ。
写真を撮るときはいつもどんなことを意識してる?
心地の良い違和感を探ることかな。
「何かを“当たり前”だと決めつけるとき、人の考えは束縛され、不自由になる。
なぜ揺さぶられるのか考えたとき、自分が何かに捉われていたことに気がつく。」と言う好きな言葉があって、
「小さな違和感を一滴垂らすだけで当たり前から自由になれる」という写真表現の特性を活かせるように、心地よい違和感を常に探してる。
—敬大くんの理論的な性格を感じる答えだね。
作風的に人を撮っていることも多いと思うんだけど、
人を撮影する上で意識していることはある?
少なくとも撮影前の5〜10分はモデルさんとのコミュニケーションの時間を設けて、自分なりにその人を解釈するようにしてる。
その解釈をもとにして、お互いの間の心地よい違和感を探ってる。
—どんな写真を撮りたいと思ってシャッターを切ってる?
10年後見た時に、撮影していた時の感情を鮮明に思い出せるような写真を撮りたいと思ってる。
自分と相手との関係値の中で、なるべく感情の波の大きい部分を捉えるためにも先に挙げてる“一滴の心地よい違和感”は役に立つと思ってるんだ。
—敬大くんの写真からは、温度やその時の音、風っていう空気を感じると思っていたんだよね。それは敬大くんの写真に込めた思いとか被写体との距離感から見る人に伝わってくるんだろうな、って今すごく納得した。
では、そろそろコラボレーションについての質問をするね。
Kotoka Izumiに対する印象やコラボレーションを引き受けた理由があれば教えてください!
琴ちゃんの描くイラストは、
本来何もないキャンバスに線を足していく「絵」という表現において、とても綺麗に引き算がなされている印象だった。
そんな作風が、何を写さないかを決めて要素を引いていく「写真」表現の中にあえて違和感という要素を足そうとしている僕の作風と合わさった時にどんなものができあがるのか見てみたいと思った。
—今回私が思う野本敬大らしい写真、というか
美しさに衝撃を受けた写真を中心に4枚選ばせてもらったんだけど
それぞれの写真について
エピソードや背景があれば教えて欲しいです。
撮った写真の言語化は、これまでもなるべく外には出さないようにしてるんだ。
この回答はなしで大丈夫かな?
—そうなんだね!もちろん大丈夫です!
敬大くんの写真は偶然なのか必然なのか、
どうやったらこんな瞬間が撮れるの?って見ててワクワクさせられんだよね。
でもそれは背景を知らないからこそ、っていうのもあるのかも。
ちなみに一番気に入っているコラボレーション作品はある?
hikariかなぁ。
この写真を撮った当時、抽象絵画に興味があって
人の感情を部分をゼロから写真に落とし込めないか実験した時の写真なんだけど、それを背景に人物のイラストが描かれているのがとてもしっくり来てる。
(hikari)
—お、普段は外に出さない写真の言語化の部分を少し聞き出せちゃったかも?
経緯だけね。笑
—最後に、敬大くんにとっての「日常の中の特別」とは?
見る人の認識の中にあるものだと思ってる。
何に特別感を感じるかでその時の自分の状態がわかるみたいな。
気づいて、拡張することができるかは観測者に委ねられてるから、
目を養うことはやめずにいたいね。
(yuuyake)
(sora)
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野本敬大の作品を見ていると、
あどけなくて、でもどこか大人に憧れていて、
切なくて、儚くて、少し大胆だった頃の自分を思い出して
なんだか少し照れくさくなる。
でもそんな照れ臭さも抱きしめたくなる
「いつでもあの夏を思い出せる」作品たちになったと思います。
今回は、夏の終わりの切なさをぎゅっと閉じ込めたような
アイテムたちがそろいました。
ぜひチェックしていただけたらと思います。
【collaborator profile】
Keita Nomoto | 野本 敬大(写真家)
1995年愛知県生まれ、東京都在住。
「表現によって人の思考・感性はいかに自由になれるのか」というテーマに沿ってこれまで多くの作品を発表している。
現在は広告、ファッション、アーティスト写真などを中心に幅広く活動。
刹那的な感情を捉えビジュアルに落とし込む作風は若い世代を中心に支持を集めている。
【展示】
2018年 「AJARA」 LIGHT UP COFEE、東京
2020年 「REBIRTH」 渋谷PARCO、東京
instagram: https://www.instagram.com/keita_nomoto/